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分子遺伝学研究室

分子遺伝学研究室

教員

教員氏名:中尾 浩史
  • 職名:教授

担当科目

薬理学、遺伝子検査技術学、臨床検査総論、臨床検査管理・機器総論など

研究概要

病原菌の鉄獲得機構
分子疫学

研究概況

鉄はほぼ全ての生物の増殖・生存に必須な元素である。病原細菌においては増殖・生存に加え、病原性に鉄を必要とするものもある。鉄は地殻に4番目に多く存在する元素であり、病原細菌を含む生物に非常に重要な元素であるにもかかわらず、環境中にある鉄は酸化鉄として、ヒトなどの生物体内ではトランスフェリンやラクトフェリン、ヘモグロビンのように蛋白質と結合して存在しており、細菌が直接取り込める鉄はごくわずかである。そのため、病原細菌は環境中・ヒト体内において鉄を獲得する様々な手段を有している。
腸炎ビブリオは増殖の最も速い細菌の一つであり、その増殖を支えるために特徴的な鉄獲得機構を有する。腸炎ビブリオはビブリオフェリンという鉄と複合体を形成するシデロフォアという物質を作り、菌体外に放出し、菌体外の鉄を複合体を形成させてから、ビブリオフェリン-鉄複合体を複合体特異的受容体を介して選択的・効率的に取り込む獲得系が存在する。
当研究室ではビブリオフェリン生合成酵素遺伝子欠損株、ビブリオフェリン受容体欠損株等を作成し、腸炎ビブリオの病原性にはビブリオフェリンによる鉄獲得系が不可欠であることを見出している。この鉄獲得系を特異的に阻害する薬剤は腸炎ビブリオ特異的増殖阻害剤となるため現在開発中である。